「パズルで頭がよくなる!」と提唱し、数多くの書籍やパズルを世に送り出してきた東田大志さんは、京都大学大学院で世界初の「パズル学」博士号を取得したパズル博士。小学校入学前の幼児期からパズルにチャレンジすることで伸びる力や、親の関わり方についてお話を伺いました。

粘り強さ、正しい考え方・ルールを守る…すべて小学校で必要!
ーパズルをすることで伸びる力について、教えてください。
パズルの種類によっていろいろありますが、どのパズルにも共通していえることが、3つあります。
1つは、諦めずに正解にたどり着こうとする、粘り強さが身につくことです。
初めてパズルに挑戦した時、30秒くらいですぐ諦めてしまう子もいます。
しかし、試行錯誤しながら考え続け、1分、そして3分と考えられるようになっていき、ついに「解けた!」という経験を重ねていくことで、粘り強く考える力が身につきます。

2つめは、正しく考える力が伸びること。
パズルは、間違った理解や考え方だと、正解にたどり着けません。子どもは時に、「こうだ!」という思い込みで突き進んでしまうことがありますが、間違った理解や思い込みでは、どうしても正解にたどり着けない。
そこで、「自分は間違った考え方をしているのでは?」「こうだと思い込んでいた」と気づくことができます。すると、いろいろな角度から考え、見ることができるようになるのです。
3つめは、ルールを守れるようになるということです。
小さい子どもは遊びなどでもそうですが、「うまくいかない…」と思うと、勝手にルールを変えてしまうことがあります。
パズルでも同様で、「解けない…」となった場合、決められたルールを勝手に変えて解こうとすることがあります。でも、それでは本当にパズルを解いたことにはならないし、成長にもつながりません。
小学校の勉強でも、勝手にルールを変えて○をもらうことはできませんから、ルールを守ったうえで正解にたどり着ける、その楽しさをパズルを通して知ることができます。
―粘り強く問題に向き合い、正しい解き方を考え、そしてルールを守って取り組む力は、小学校からの勉強にもとても役立つ力ですね。
小学校の低学年では、先生が問題の解き方を説明してくれる、というやり方が多いと思います。自分で考えて問題を解くということに慣れないままだと、答えがすぐに出ないと諦めてしまう、という子もいるようです。
そこで、小学校での勉強が本格的に始まる前に、いろいろなパズルにチャンレンジし、考える・取り組む力を伸ばしていきたいですね。

親は、ヒントを出し、一緒に考え、悔しい思いにも共感を!
―では、子どもがパズルをするとき、親はどのように関わればよいでしょうか?
パズルを見ると、親は子どもより早く解けてしまい、つい解き方や答えを言いたくなってしまいます。ですが、そこはぐっと我慢してください。子どもが、自分自身で考えることが大事です。
例えば、3分間考えてもわからない場合は、答えを言うのではなく、答えが導き出せるような軽めのヒントを子どもに伝えてあげてください。
子どもにとっての3分は大人の3分とは全く違う長さで、もう永久に解けないんじゃないかと、子どもは思ってしまうこともあります。
ですから、子どもが自分で考えて正解できた喜びを味わえるよう、上手にヒントを出しながら、答えに近づけたり、違った角度から考えられたりするように、導いてほしいと思います。
また、5分間、一生懸命考えたけれどわからなかった時は、答えを見せてもいいでしょう。答えを見て、「そうか!こうだったんだ」「もうちょっとだったのに…」と悔しい思いをするのも、成長へのステップになります。
3分間あるいは5分間考えてもわからなかった場合、もしかしたらルールを間違って認識している可能性もあります。途中で、ルールを正しく理解しているのか、確認してあげるといいですね。
―30秒くらいで「わからない」と言って、すぐ諦めてしまう子への対応は?
お父さんやお母さんが仮に答えがわかっていたとしても、わからないフリをして、一緒に考えてみてください。
「ここは…こうかな?こっちかな?」などと言いながら、がんばって考える姿を見せてあげてほしいです。
すると、すぐに答えにたどり着くことがすごいのではなくて、がんばって考えた末に正解にたどり着くことがかっこいいんだ、偉いんだ、と実感できることでしょう。
―パズルが解けなくて、癇癪を起こしてしまう子もいるのでは?
いますね(笑)。
でも、解けなくて癇癪を起こしてしまうのは、悪いことではないんです。
大人なら、感情をコントロールして落ち着いて対処することが大切ですが、子どもが、自分で自分の感情をコントロールするのはまだ難しいことです。
パズルが解けないことが悔しくて腹が立つというのは、それだけ興味や関心が高いという証拠。どちらかというと、パズルに向いていると言えるでしょう。
癇癪を起こされるのが嫌だからと、親はすぐ答えを教えたり、見せたりしてしまいがちですが、そこはグッと堪えて! 諦めずに取り組めるようヒントを出したり、一緒に考えたりしてほしいですね。
パズルに何度も挑戦し、時には癇癪を起しながらも、「解けた!」という経験を重ねていくと、自分の感情も徐々にコントロールできるようになっていくと思います。
―パズルが解けた時は、答え合わせをした方がよいのでしょうか?
そうですね。できたら、ちゃんとルール通りに考えることができていたのか、という点も確認してから、答えを見るといいですね。
それが後々、テストの見直しをちゃんとすることや、ケアレスミスを防ぐことにもつながっていきます。
「京大こどもパズル」は5歳からおすすめ!
―『5さいから育てる天才脳 東田はかせの京大こどもパズル』のシリーズとして、2020年夏『3バナナのなぞ』『4メロンのなぞ』が発売されました。この「京大こどもパズル」について、教えてください。
大きな特徴は、いろいろな種類のパズルがあるということです。いわゆる点つなぎや、迷路などのパズルですが、それぞれルールをよく読み、解き方をじっくり考え、試行錯誤しながら正解にたどり着く、かなり難しい問題もあります。それだけ挑戦する意欲もわき、5歳から小学校3年生くらいまで、幅広い年齢で楽しめると思います。
また、ルールを守って論理的に考えながらも、ひらめきがないと解けないパズルでもあるので、今話題の非認知能力も育まれるパズルになっていると思います。

東田 大志(ひがしだひろし)
1984年兵庫県生まれ。京都大学総合人間学部卒業、同大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。「パズル学」の論文により日本初の博士号を取得。パズル作家としても70種以上のパズルを考案している。小学生から高校生までパズル三昧の日々を送り、高校三年生の夏休みから本格的に受験勉強を開始したところ、京都大学法学部に現役合格。大学在学時に、自作パズルを書いたビラを47都道府県で配り、通称「ビラがパズルの人」として話題になった。テレビ・ラジオにも多数出演中で、新聞や雑誌にも連載を持つ。
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