育児ミニ情報

「手づかみ食べ」は子どもの「脳」と「意欲」を育てる~家庭で行うコツも紹介~


離乳食後期(9~11か月頃)になると、赤ちゃんは自分から食べ物を手でつかんで口に運ぶようになります。この子どもが自分で食べる「手づかみ食べ」は、実はとても「脳」によいそうなのです。

でも、親としてはまわりを汚して大変、だから、やめてほしいと思ってしまうことも…というのが正直な気持ち…。

そこで、実際に「手づかみ食べ」を行っている、どんぐり保育園・どんぐりっこ保育園の創設者であり、『子どもの「手づかみ食べ」はなぜ良いのか?』の著書である清水フサ子先生に詳しくお話を伺いました。

監修/清水フサ子(社会福祉法人どんぐり会理事)

「手づかみ食べ」で使う手指は「突き出た大脳!」

実は、手の指は「突き出た大脳」といわれるほど、脳の発達に大きく関わる部分。

「手づかみ食べ」をすることによって

  • 感覚機能の協調性
  • 運動機能の協調性
  • 手指の巧緻性

などといった、多くの機能の発達につながっているのです。

「見て」「触れて」「味わって」感覚機能や運動機能が豊かになる

食べ物を自分で手に取って食べるということは、

まず、手に取って食べるために食べ物を目で「見て」⇒「視覚」
そこに手を伸ばして「触れて」⇒「触覚」
そして、うまくつかんで口に入れ「味わう」⇒「味覚」

といった一連の動作を繰り返すことで、子どもの感覚機能を育むことにつながっていきます。

 

最初は、食べ物に手を伸ばしても器からはじき出したり、口に持っていっても上手く入れられず、鼻や下唇に押し当てたりしてしまいます。しかし、繰り返し続けていくことで、食べ物との距離感や位置関係などをつかんでいき、次第にうまく取って食べられるようになるのです。

 

さらに、食べ物を食べるために「目の動き」と「手指の動き」を協調させたり、手をより自由にしていくために自分でお座りの姿勢を保持したり、「食べること」は運動機能の向上にもつながっています。

最初は、手のひらでおおざっぱに触ったり、にぎったりすることしかできません。

それが親指と人差し指で小さなものをはさめるようになり、次に親指と人差し指、中指でつまめるようになります。

この頃には、片手で器を押さえながら物を取り出したり、コップに入った水を両手で持ち上げて飲んだりといったことに挑戦するようになります。スプーンが目の前にあると、柄を持って遊んだり、スプーンに入ったものを食べたりします。そうした発達の先に、「道具を使って食べるようになるぞ!」という意欲の芽が生まれるのです。

手づかみ食べの準備

自分から食べ物に手を伸ばすようになったら、「手づかみ食べ」スタート

  • だいたい生後7か月くらいから、少しずつ「手づかみ食べ」に触れていきます。
  • でも、まだ腰がすわっていないので、抱っこした状態です。

抱っこしてテーブルの前に座ると、皿に載っている食べ物に手を伸ばすようになってきます。自分から手を伸ばすようになったら、それがサイン。その子の意欲のままに手づかみ食べに移行していきます。(7か月だとまだしっかり食べることができないので、食べさせてあげる割合の方が多いのですが)

家庭での手づかみ食べ工夫ポイント
  • 器から取り出すことがまだ苦手な7か月児には、野菜スティック!

この頃の赤ちゃんはお皿をすぐにひっくり返してしまいます。認識力が十分ではないため、まだはっきりと器と器の中身が分離しておらず、お皿と中身の野菜が一つに見えているのです。野菜スティックを手に持たせれば、赤ちゃんが口に入れている間、お母さんも赤ちゃんを抱きながら自分の食事をとることができますよ。

 

生後8~9か月頃 口のまわりにぐちゃ!の経験が”自信”に

生後8~9か月頃になると、器の中の野菜にしっかりと意識が向いてつかみ始めます。

お皿の中の野菜だけをぐちゃぐちゃしたりすることもできます。

しかし、まだ手の使い方が上手ではなく、口の周りに野菜をぐちゃっと押し付けるような食べ方です。手と口を上手に協応させて食べるのは難しい時期です。

 

しかし、子どもが自信をもって食べられるようにするには、この時期を経験することがとても大切です。こうした食べ方を通して、食べ物と口の位置関係や距離感、手指の巧緻性、触覚などを育み、広げていくからです。

手づかみ食べの強制はNG、環境があるだけでOK!

生後8~9か月といえば、主に大人が離乳食を食べさせる時期です。

離乳食だけでは足りず、母乳やミルクを足す必要もあります。

ですから、「何が何でも手づかみで食べさせなければいけない」と思わないでください。

まず、抱っこやお座りでおうちの方と一緒に離乳食を食べているときに、赤ちゃん自身も食べ物に手を出したり、口に入れたりできる環境を作ってほしいということです。そうすれば、赤ちゃんの「自分で!」という自我の芽生えにつながっていくでしょう。

「手づかみ食べ」実践方法

生後10~11か月くらいになると、手でつかんだ食べ物のかなりの部分が食べられるようになっています。

そして、「自分で食べたい!」という思いが出てきます。今までの食に向かう様子とは違って、それはとても強い思いです。

そのあまり、「最近遊び食べがひどくて…」と多くのおうちの方が悩み始める時期でもあるようです。しかし、それはいたずらのように見えて、「自分でやる!」という自我を育んでいる最中です。

保育園での工夫をご紹介しましょう。

こぼしても大丈夫!だって、テーブルがお皿!

保育園では、「テーブルをお皿」と考え、お皿の中のものも落ちたものも関係なく口に入れてもとがめないようにしています。

「お皿から落ちた食べ物は食べない」というしつけは、もっと大きくなってからが適切だからです。

それよりも、テーブルごと水洗いをしたり、外に干して日光消毒を行ったりするなど、テーブルの方を清潔に保つことを心がけ、存分に手づかみ食べができるようにしています。

保護者の工夫を紹介!
  • 赤ちゃん用の椅子で取り外しできるテーブルがついているものを選び、テーブルごと丸洗いしている方も!
  • 床にシートなどを敷くと、食べこぼしても安心。

手づかみ食べメニュー紹介!

   
① 噛みきれない食べ物

ごはんを食べる前に、咀嚼(そしゃく)を促すためになかなか噛みきれない食材をあえて出しています。お腹がすいている最初だからこそ、たくさん噛んで、あごの力を育てています。

⇒少し硬めに茹でたゴボウ、にんじん、キャベツやブロッコリーの芯など

 

② おひたし

甘い芋やお米を先に出してしまうと、そちらばかり食べてしまうので、おひたしなどを先に出します。

⇒キャベツ、白菜、小松菜、春菊などの葉物野菜のおひたし

 

③ 煮た野菜スティック

素材本来の味を伝えて味覚を育てたい時期なので、昆布だしで煮た薄味にします。

⇒大根、にんじん、玉ねぎ、ブロッコリーなどの野菜と、じゃがいも、かぼちゃなどの芋類

 

④ タンパク質

アレルギーの心配があるため、白身魚、とりササミ、豆腐などのアレルギーを起こしにくい食材を少量から慎重に。

⑤ 柔らかめに炊いた白米

 

「汚しちゃダメよ」よりも、「自分で食べてえらいね」で子どもの「意欲」を

離乳食は、「あーん」と口を開けて大人に食べさせてもらうのが一般的です。

しかし、そうすることによって子どもは、食に対して「受け身」の姿勢が染みついてしまいます。

実際、8~9か月頃までなら、「あーん」とすれば食べてくれます。

しかし、ここで「離乳食はお母さんが食べさせてくれるもの」と認識させてしまうと、次の段階で「自分でやる!」と芽吹く自我の発達を抑えてしまう可能性もあるのです。

「汚しちゃダメよ」よりも、「自分で食べてえらいね」と声をかけてあげたいですね。

 

清水先生からのメッセージ

まずは、「お母さんと子どもが楽しく食に向かうこと」から始めましょう。

それから、「しっかりとお腹を空かすこと」

市販の甘いお菓子のような間食はやめましょう。午前中は外気にもふれて、十分に遊ぶことができればよいですね。

生活リズムが崩れてしまっては、食に影響します。早寝早起きや食事の時間、遊びとお昼寝の時間など、メリハリのある形で生活のリズムをしっかり整えていってあげることも大切です。

あくまで標準的なことを述べましたが、子どもの育ちは様々です。

月齢などにこだわりすぎず、ゆったりと見てあげてくださいね。

 

【監修】 清水フサ子

埼玉県の公立保育園にて32年間勤務した後、どんぐり乳児保育園を創設。その後、どんぐり保育園を立ち上げ、初代園長となる。以来、「どんぐり保育園」「どんぐりっこ保育園」にて、子どもの成長を見ながら、若手保育士育成や子育て中の保護者のための講演活動などを精力的に行ってきた。著書『子どもの「手づかみ食べ」はなぜ良いのか?』(IDP出版)を山口平八氏と手掛ける。

 

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